フジロックのご報告/前夜祭〜1日目

フジロック、嗚呼フジロック フジロック

さて先日の日記でも申しましたように 今年も飽きずにフジに行って参りました。徹夜で準備して前夜祭の日の始発で向かい クーラーのガンガン効いた電車で疲れ果て熟睡した為 現地に着く前に風邪をひくという 笑 自分史上屈指の間抜けさで始まった今回ですが それと毎日やってくる豪雨タイムのせいもあって全体的にいつもよりテンションが低めではありました。それに人が多すぎる… 去年位なら最高だったんだけどなあ… でもまあ 観客のテンションは全体的に例年以上に高く マナーの低下やあまり個人的に好ましく思えない輩も増殖しましたが(ライブ中にビートが強くなっただけで条件反射的に手拍子する馬鹿は絞め殺してやりたい。音の流れを読めんのか 緊張感のある停滞を楽しむ部分で手拍子されたら台無しだ)フェス自体は成功だったんだろうなあ…と想像しています。来年もこんな観客数ならば よほどの面子でないと行くかどうかは微妙ですが…でもいっちゃうんだろうなあ。最終日明けて朝5時、いつものようにテントを畳みながら 本当に帰りたくないなあと これから会社出たくないなあと真剣に悲嘆にくれましたから 笑
という訳で自分が観たもので特に気になったものを紹介していきましょう。

前夜祭、狂乱のオープニング

テントを立てたのは2時頃でしたが そこからテントで熟睡していて会場入りしたのは前夜祭パーティーが始まる直前の8時でした。いつもはオアシスで抽選会やら盆踊りを眺めているのですが 今回は気が変わってこれからパーティーの始まるレッドマーキーに向かってみました。おおー。セッティングするスタッフ以外誰も入れないようにFUJIROCKのテープが張られて空っぽのマーキーの入り口には いまにもテープを乗り越えて駆け出していってしまいそうなテンションの若者達が今か今かとスタートを待ち受けています。テープを挟んでマーキー内からはこちらを制するようにセキュリティーのお兄さんがにらんでいます。そして8時。多分オアシスの方では恒例のカウントダウンをしていた事でしょう。ドーン!という音が先だったか後だったか、誰も背後の大きな打ち上げ花火に振り返ろうともせず テープが外される暇も無く皆テープを乗り越え一斉に歓声を上げながらレッドマーキーの中になだれ込んでいきます。何故か全員ダッシュで 笑 そしてステージではフジではおなじみの前夜祭DJ マメヅカ氏の回す音の空間への響き方で ここがフジのレッドマーキーなのだと体で実感し それが本当に感無量で ようやく 自分は1年間待ちわびて来たフジにやって来れたのだと実感したのでした。そしてそれは多分その場にいた全ての人がそうだったのでしょう。

DJ MAMEZUKA氏は私が初めてフジに来た00年と較べて本当に良くなったと思う。相変わらずベタベタな選曲なのだけど このどうしようもなくパワーを持て余した群衆をお祭り騒ぎのベクトルにノセていく事を第一に考えている感じで 頭からかけてきたfatboyslimというチョイスは当然といったら当然なのだが その期待をまったく外さないっぷりが素敵だと思う。上手い事今年のラインナップから持ってくるんだよなあ。もう絶対、フジでの最大の盛り上がりはこの前夜祭の彼のDJだろう。昔はライブの繋ぎの時間みたいな感じで皆大して踊らなかったのに 随分変わったものだ。
毎年前夜祭でのライブ1発目は 絶対に外さない素晴らしいアクトが観られる。進行役の 故ジョー・ストラマーの精神を引き継いでいるのが彼らだ、というようなMCで出て来たのがBanda Bassotti。これが本当に驚きでした。イタリアで結成された パンク色の強いスカ系のバンド。めちゃくちゃ暑苦しいおっさん達が熱演しているのですが このリズムが凄い!手数がどうだとかそういうものではなくて ただもうひたすら1発1発が驚異的な粘り。それでいて引き際は潔くスッと切れ パンクの軽快さも併せ持つので決して重苦しくなく つまり重心を落として踊るには最強に気持ちよいリズムなのです。スカ系のバンドは国内のものならいくらか観た事はありますが どれもまずまずで スカというのはこんなもんかという位にしか思っていなかったのが覆されてしまいました。これは…日本人には出せない粘りだろうなあ。本当感服いたしました。

1日目(29日)

天気予報ではいつ雨が降るかわからないとの事でしたが 朝起きると超快晴。とりあえず会場に行く前に湯沢に戻って温泉に浸かる事に。ただでさえ風邪気味なのに前夜祭で飲み過ぎはしゃぎ過ぎに付き 既にちょっとヤバい事になっていたので風呂に入ってリラックスしたかったのでした。今回は湯沢駅から歩いて10分くらいの所にある町営の「駒子の湯」です。まだ朝 それにフジはまだ1日目が始まったばかりという事で 清潔そうで広々とした浴場を一人独占できました。幸せ…
この日はフィールドオブヘブンのトリにROVOの2時間セットが控えているのであまり暴れずぶらぶら会場を見て回る事に。最初にまず一番奥のオレンジコートまでいってSKA CUBANOでひと踊り。キャズ・メイオールをここで見かけたのだが格好がなんかまっ黄色い網シャツに同じくまっ黄色いステテコのようなパンツでウロウロしてたような…ある意味彼ならではのセンスというか…笑
SOIL&"PIMP"SESSIONSは以前朝霧で観た時よりもさらに激しく 結構な盛り上がりよう。やっぱり名前の通り快晴の下が一番似合うバンド。ジャズというより歌謡曲的なロックなのかもしれないが 和音の進行がとても爽快で妖しくて気持ち良い。
グリーンステージで観たCAKEは良く知らない人達なのだが カントリーをベースにひねくれた現代的なアプローチをかけている感じ。とぼけた感じがしながら妙に所々鋭い。結構面白かったのだが この時点でとうとう大粒の雨が降り始め 風邪をこじらすか完治するか瀬戸際な感じの状態の自分としてはやむを得ず半分程みた所でテントに一時退避。お詫びと行っては何ですが フジから帰って来てから1枚アルバム買いました。中々良いのでたまに聴きそうです。
テントに戻って一息つくとじき雨も上がったのでホワイトのPrefuse73へ。少し早いのでついでにヘブンのTokyo No.1 Soul Setの後半だけ観る。あの淡々としたボーカルのイメージで一体どんなライブなんだろうと思っていたが意外にボーカルのBIKKEが結構客を煽ってノリノリで 曲も変化に富んでいて楽しんで踊った。
さて本日の1つ目のお楽しみPrefuse73。前回のフジでのライブは良かったものの かなりヒップホップ色が強く単調で これならアルバムの方がいいなとも思ったのだが 今回は前回とは構成が違いツインドラム、ターンテーブル、そしてスコット・ヘレンは恐らくサンプラー? ライブの内容は全く前回と別物。そして最高! スコット・ヘレンはキレキレで頭をブンブン振りながら彼独特の奇想天外なサンプリングを絶妙のタイミングで繰り出すし なんといってもツインドラムですよグヘヘ。アルバム寄りのエレクトロニカ色濃い音なのだが2つのドラムセットの生み出す微妙なズレが気持ちよいグルーヴを生み出してゆく。ドラマーがそれぞれ黒人と白人なのも面白い。Prefuse73の音自体 土台の黒いグルーヴの上に白いWARP系特有の涼しさがあるのだがそれを象徴しているかのように それぞれのドラムの味わいが違う。これは絶対に生じゃないと味わえない! 観客も最初は広いホワイトステージにもまばらだったが 終わる頃には振り返ると人で一杯に。本当に楽しかったなあ…
気持ちよく踊った所でまたテントで休憩。万全の体勢で暗くなったヘブンへ「もちろん」ボードウォークルートで赴く。メインのルートの他に ヘブン オレンジコートへ経由する一方通行の林の中に渡された小道があるのです。昼過ぎの大粒の雨で提灯が落ちてしまったのは残念だがただの裸電球もまたシンプルで趣きよし。そしてあの林の中に吊るされたミラーボールの神々しい光線も健在! 自分の中ではところ天国の光の粒の映写 ヘブンの笑ってしまう程美しいライティングと並んでフジの名物としています。ヘブンに着くと丁度PE'Zが最後の曲をやる所…やっぱり彼らはあまり好きではないなあ。同ジャンルのSOILは楽しめるのに。

さて今日のメインイベント ROVO。いつも後ろか真ん中程で観ているので今回はじっくり山本精一を観てやろうと最前左寄りゲット。前回野音で観た時 7人から6人に減った穴を埋めようとしてか テンションは高く各人の調子は良さそうなものの うまく噛み合わずのたうち回ってもがいている印象が強かったのだが…
いやこれは凄いわ。ROVOのライブは通算6回目位になるがその中では文句無く最高。DVDより良かったと思う。2時間という余裕たっぷりの枠を生かして、水増しするわけではなく じっくり 着実に 決してせかすことなく音をくみ上げていく。ROVOというバンドは各人のスキルは高いが決して息の合った集団では無いのだと思う。各人の個性が強烈で お互い探るように時にすれ違い、時にぶつかり合いながら音の螺旋の勢いを育てていく。そしてそんな半ばインプロの長い長い音のやりとりのうちに だんだん全ての波長が合い始め 観客もそれに引きずり込まれやがては凄まじい奔流の一部になってしまうのだ。今回はその組み上げ作業が本当に根本的なレベルから行われたのではないかと感じられた。2時間をフルに使って 6人という組み合わせでもう一度始めから構成し直そうという試み。前半の1時間はまだパーツをそろそろと重ねてみたという状態だったが 後半はそれを土台に一気に素晴らしい高みに上り詰めていった。全ての歯車が完全にかみ合った状態。あんなに沸き返る観客を観た事が無い と最後のアンコールでのPYRAMIDでふと周りを見渡し思ったものだ。暴力的なのではなく ただもうどうしようもなく美しい音が自分の中からわき上がるのを昇華させるために体を動かしている そんな感じだ。切実ですらある。本当にあっという間の2時間(と少し)であった。恒例の半ばに入るドラム陣のパートも良かった。そういえば最後山本氏は珍しく観客に向かってペットボトルを投げていた。そういうキャラだったのか…? 笑 しかし照明もすごかったなあ…大光量のビームライトが何筋も無窮の夜空に吸い込まれていく様は本当に美しい。これがROVOを初めて見るという人が沢山いただろうが 幸せ者だよ全く…
これで満足しきってしまったのでもう寝ようかとも思ったが とりあえずところ天国(小川の流れる河原の広場でところ天を売るバーがあるのでこんな名前のエリアなのです)で上映するDEEP BLUEをしばし鑑賞してマッタリする。山の中で海の食物連鎖を眺めるって不思議な感じだ。
次に場外のパレス・オブ・ワンダー内にあるルーキー・ア・ゴーゴーというステージで会社の同僚の知り合いだというバンドのCHERRY COKE$を観る。アイリッシュ民族音楽の色が濃い楽しいスカ〜パンク。テンションが高すぎて空回り気味ではあったが地力を感じさせるすごく真面目な良いバンドであった。
少しここで休憩すると次はレッド・マーキーでMADLIBの後半へ。ヒップホップから次第にモータウン系の(っていうかマイケル・ジャクソンのROCK WITH YOU。これがすんなり上手にかかってみんなハッピーにっていうのがこのDJの上手さを感じた時だった。もうすこし頭からじっくり聴きたかったな…
次はDJ KENTARO。2年前衝撃的なフジデビューを果たして今回は更にどうなったのか。正直テクはものすごいしKEM名義での普通のDJも趣味良くうまくやるのだが まだまだ子供っぽいというか おもちゃを上手にいじってるだけの感じもしていたのだが 今回は結構そこの所も進歩し始めて来たと思う。まだ深い所に到達しているとはいえないが とにかくいろんな音を聴いて いろんな事をやりたいのだとういう意気込みを強く感じる。技術的にもまだ成長していて 持ちネタであるターンテーブルのピッチを変えて曲を奏でてしまう技などは 前は単なる余興のようなレベルだったが 今回では立派な楽器といってもいいレベルになりつつある。面白いというか末恐ろしい人だよなあ…ぜひこのままどこか遠くまで突っ走ってほしい。途中は笙?だったかな 笛の奏者が着物姿で登場して超和風なセッション。笛もすごいハイテンションで(っていうか純邦楽って基本的にテンション高いよね。ビートや調に縛られないから無制限にハイになるのかしら?)
しかしこの人はヒップホップのレコードを使いはするけど 感覚は全然ヒップホップとは違うような。この日も途中からはハウスに(それでも惜しみなくトリッキーなプレイをしていた) しまいにはゴリゴリのドラムンベース攻めでもうこれは踊るしか。いや本当フェスに合う人だよ。ちなみに途中でDVDJも何度か披露してました。あとVJもすごく息があってて素晴らしかったなあ。先読みの技術が素晴らしいというか めまぐるしい音の変化にことごとく食いついていったのが凄いと思った。


さてここで力つきてテントに帰投。翌日は豪雨と人の多さと体調の悪さに泣かされる事となるのをまだ知ら…いや大体想像ついてた。だって風邪ひいてるのに暴飲暴食で前夜祭の時点で酔っぱらいだったんだもん 笑 残りは明日書きます。2日目は全くエイドリアン・ブリューに尽きるぜ…ていうかそれが良すぎてそれ以外あまり記憶にないっていうか…あとは次点でPRAXISね…バケツじゃなくて近藤さんとかカラカサオバケが出て来たけど…いやもうほんと良かった…ディシプリンなクリムゾンがね…(ってまたブリューの話か)