4/2 ゆらゆら帝国フリーライブ 日比谷野音

応募のはがきを出したら帰ってきた当選はがきの整理番号が恐ろしく早い事になってしまって、野音前にてチケットとの引き替え指定時間が正午の30分間という不親切設計…(ライブは6時半)休日から早起きするのは本当に辛かった。花粉症は朝の倦怠感が猛烈なのだ。
結局一旦家帰って休んでから開演ギリギリに入場。どうやらチケットを持っていないながら外で聴くべくあつまった人達も最終的には入れてもらえた様で場内はとても良い雰囲気。外の空気と煙草とビールの匂いが渾然として立ちこめると自動的にテンションが上がる。最初はマネージャーの清水氏から、ライブ観覧についての注意。野音は座席が固定ですり鉢状の会場だから暴れられると惨事が起こるからだろう。官庁舎の建ち並ぶ隙間にしつらえたような会場は 汚い曇り空にも日が落ちて暗くなっていくと 条件反射で今にもライブが始まりそうで身構えてしまう。
多分6時45分も過ぎた位に3人が登場。どうでもいいがこの間 "元ネタ"灰野敬二氏のライブを観た所だったので余計千代氏の姿が気になって仕方がない。昔初めてゆら帝のライブを観た時もあの格好がハマりすぎていて非常に気になったのだが。
まず1曲目、今度出るアルバムから新曲「ザ、コミュニケーション」。天井の無い広い会場にもかかわらず まるで狭い小さな箱で聴いているような錯覚を覚えるスローで閉塞感のあるパーソナルな音。そこから2曲目「男は不安定」。閉じていた箱が、すこしづつ野音の開放感に合わせるようにすこしづつ開いていく感覚。ライブ後半ではすっかり野音の天井無しの感覚に音が変わっていたように思う。そういう構成なのか自分が慣れたのか判らないが。
3曲目に「夜行性の生き物3匹」。盛り上がろうとすればむやみに上がれる曲なのに絶対そんな事はしないのが好きだ。なにか夢中になる一歩手前ですっと引いて予想だにしない別の所へ持っていこうとする様な。しかしこのバンドはいい。今までは前の方で揉まれながらなんとか観ている感じだったので今回は冷静に観るべく後方のPA横で俯瞰するように観ていたのだが 3つの音のバランスが絶妙で野音のステージ背後のコンクリに反響した音像がロールシャッハテストの図像のような美しい花の形を創り しばし「目で鑑賞」しているような錯覚に囚われた。これが要するにサイケデリックというものなのだろうか。照明も途中から赤いライトだけながら気が利いていて ステージ背後に3人の妖怪みたいな素敵シルエットがぼんやりと互いの位置とサイズを変えながらゆらめいている。
ライブも中盤を超えると いよいよ慎太郎氏のギターも調子良く 例のくねくね弾きも炸裂しまくりで 恐らく沢山いるだろう初めてゆら帝のライブを観る人はどう見ているのか気になる 笑 あの足をアンテナの方向を調整するみたいにぶらぶら動かすのは ギターの音色の独特のゆらぎにしっかり反映しているようで 色々考えた末に編み出した奏法なんだろうか?
結局ライブは1時間半くらいあったように思う。最後はEVIL CAR。どこまでも飛んでいったのに急に最初いた場所にひきもどされて またいつの間にかどこか遠くへ連れて行かれるような。途中新曲も色々あったように思う。特にコメントもアンコールもなく いつものようにあっさりとお別れ。非常に満足してこの余韻を大事にすべくそそくさと帰ったのでした。この企画を立てたゆら帝ならびにスタッフ関係者の皆様ありがとうございました。まだ灯りのいくつか付いている官庁のビルに見下ろされながらこんな音を聴くのは心地の良い後ろめたさでもありました