William Basinski "Disintegration loop 1.1"(asin:B000306100)

http://www.faderbyheadz.com/
映像作家であり音楽家でもあるウィリアム・バシンスキのDVD作品。
あのWTCが崩壊した9.11を題材に製作されたもので
ブルックリンの自宅から黒煙の上がる様子を淡々と映したもの。
撮影するカメラは60分全く動かず、音もごく短い牧歌のような声の断片をぼんやりと霞ませて延々とループさせており、
観はじめた最初はかなり当惑した。しかし、
恐ろしく美しく非現実的な黒煙のシルエットがゆっくりと形を変えて行き、
(一目であの事件の事なのだと理解出来ると同時にどこか美しい風景画のようにも見える不思議さ!)
やがて日が沈んでゆき、煙が段々と水に拡がる赤く濁った血のように変化していく様に
だんだん落ち着かない寒気のような物を感じるようになる。
牧歌の断片のループも最後には切れぎれになり、やがて街の明かりを残して総ては赤黒い闇に沈む。
うあーもう怖いー怖いよーでも何故か魅入ってしまう。
私はアメリカの人ではないので制作者の意図通りに受け取れている自信は全然ないのだが
死について考える時の、動かしがたく暗澹とした、
それでいて惹き付けられてやまない強い力(それは多分数少ない真実という物の力だろう)と同じものを感じる。
この作品、もう一度観る気に今はなれないが、次に観たくなる時って相当な状況かな…