この数ヵ月、暇をみては過去にとりためたビデオクリップの内容を整理しているのだが、
今日は久し振りにRadioheadのCreepのビデオを観た。
彼等のOK Computer以降のビデオはランク付け出来るなら最高ランクの芸術品レベルで、
それぞれに変わった趣向をこらしているのだが、
それ以前に作られたこのCreepは、
対照的にライブで歌うメンバーをただ映しているのみで、一見非常に地味である。


だがしかし!これでいいのである。
このビデオを観ていると、この監督はどうとか、カメラワークがどうとか、
そんなことはどうでも良くなってしまう。
英語の苦手な僕でも理解できるような平易な言葉で、
派手さの全くないゆったりしたバラード。
でもその音の内には、なまじっか叫んでいるだけの音楽には絶対太刀打ちできない
高圧のエネルギーがあり、
その圧力で今にも空中分解してしまいそうな危うさに、
彼等の演奏する姿以外、何も加える手立ては無いのである。
同傾向としては、なんとなくNirvanaのあまりにも有名な
Smells Like a Teenage Spiritのビデオを思い出す。
こっちはいくらか演出が入っているが、結局キモは彼等の演奏である。


というわけで、一人でただ、途方に暮れてビデオを何回も巻き戻す明け方でした。




先日も書いたように、
スネオヘアーのインディーズ時代、カフェオレーベルから出した作品を何枚か聴いている。
この前少し感想を書いた時は、安直な一言で済ましていたが、
もう少し詳しく書くと、
彼の今まで聴いて影響を受けてきた色んな要素を
このインディーズの段階では比較的ストレートに出している点が一番印象に残る所である。
音響っぽいのはそういうもの、プログレやメタルの影響はそのままそういうもの、
という風に曲ごとにきっちり素直に分けて出している感じ。
そんな印象を受ける。
だから通しで聴いていると、マキシ一枚でも音の傾向の振れ幅が大きくてちょっとびっくりする。
これがメジャーデビュー後になると、それらの要素がやっと消化されてきて、
やはり試行錯誤感が強いものの、割と元になるジャンルを強く意識させない、
比較的まとまったスネオ独特の音という感じになってきているのである。


それにしてもここで強く思うのは、この音はレディオヘッドコーネリアスといった先駆者によって、
音のジャンル分けの制約が事実上無くなってしまった事が大きなマーケットでも
当たり前になった境界線ギリギリかそれ以降の音、と感じる事である。
以降の音、というのはあらかじめテクノや音響とロックが当たり前に同居するという事で、
昔はロック系の作品の中で何か変わった音を入れるのに
若干の気負いや照れ隠しを感じたりするものだったが、
ここにはただ、やりたいからやっているだけであまり気負った感じがみられない。
まあスネオヘアーに関しては、少し自分は盲目的になっているのを感じるから的確ではないかもしれないが、
今出てきている新しい世代の良い音楽はそういう「以降」の感覚を受けるものが多い。
スネオはその境界線ギリギリという感じ。
ニューアルバムは先行シングルのウグイスを聴く限り、
今までの荒削り感は無くなって不安定さも減少し、
多少マーケティングを意識したような整った音になっているが、
先日のライブを観た限りでは更に広い音色に目を向けて色々試してみているようである。
どんな音が出てくるのか不安混じりに待つ事にしよう。