落下の王国

ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

劇場公開されていたとき観よう観ようと思っていてうっかり見損ねたので。
ビデオクリップ業界では華麗且つ意味深な映像づくりで有名なターセム監督の映画2作目。前作のザ・セルはビデオクリップ出身の監督にありがちな「絵だけはすごくいい」っていう作品だったけど(まあその絵だけでかなり満足できるものではあった)この「落下の王国」(原題は"The Fall")はストーリーの方も絵のレベルにすこし追いつけてきた感じだ。ストーリーはこうだ。1910年代、まだ映画がサイレントで初歩的なものであった頃。とあるスタントマンが歩けない大怪我をして入院していた。彼は美しい女優との恋に破れ、自棄になって危険なスタントに挑み、馬から落ちたのだ。その病院には、同じように木から落ちて腕を折った、5歳ほどの少女がいた。若者は暇をもてあましていた少女に目をつけ、とある"悪事"をさせるために気を惹くべく、即興の物語を話し聞かせ続ける。若者の死に魅かれる病んだ魂と少女の気まぐれな想像力が混じりあい、幻想的な叙事詩が二人の目の前に広がっていく…
まあこのプロットだけでもう成功したようなもんだよな。ここでピンとくる人は大体満足できる映画です。絵づくりが身上の人にとってはたまらない題材だろう。実際話はあんまり深くなくて、ただひたすら死の匂いが漂う壮麗かつ支離滅裂な御伽噺を2時間楽しむべきだ。TBSの世界遺産が好きな人ならかなり好きだと思う。そりゃそう、この叙事詩のセットというのが実際の各地の世界遺産をそのまま使ってしまっている。(ただ、あくまでも表現したい絵の背景に徹しているので決して世界遺産見物がメインみたいな見方は無理)またこのご時世に、この手の作品のくせに、あくまで手作りでありCGを使っていないのもかなりポイントが高い。
余談だがこれ系の作品を神域にまでつきつめると俺の超大好きなアレクサンドロ・ホドロフスキーとかセルゲイ・パラジャーノフということになると思う。しかしそこまでの凶悪なパワーは「落下の王国」にはまったくないのである意味誰にでも安心してオススメできる。逆に言うと「落下の王国」に本当にハマった人は、一度上の2名の作品を見てみるといいよ!(本当いうと非常に劇薬なのでオススメできないです。)
でもあれよね。やはりビデオクリップやCM畑の人らしく、一番素敵なのはOPだったね。鮮やかな色使いが多い作品だが、あのモノクロの映像が一番繊細で美しい。