ノー・カントリー

ノー・カントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

ノー・カントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

非常に良かった。好き嫌いはあると思うが傑作の部類と思う。本作には大きななカタルシスはまったくない。お約束的にいってここでは良い展開になるでしょ?ってところで大体そうならない。普通ここはちゃんと描写するでしょ?という所はあえて描かない。しかし話全体は非常に緊張感のある、ゆるぎの無いストレートな骨組みで組まれている。麻薬取引の手違いで放置された大金を偶然手にしてしまった男モス。それを回収するべく追う不気味な殺し屋アントンからの逃走が始まる。そしてそこに引き寄せられていく退職間近の老いた保安官。構図自体は昔からある非常にオーソドックスなもの。しかしそのシンプルな決して逸脱しない骨組みの中で、アントンを前に死を覚悟した人々は、さまざまな形で控えめに魂のありようを表して消えていく。やがておよそ常人の世界の外側のルールで動いている殺し屋のアントンが、神のような超越者にすら見えてくる。(※ちなみにそのアントン自身もコインの裏表のような、単なる偶然に支配されていると思わせる描写もある。映画の最後でコインの裏表で答えを出す事を初めて人に否定された後、同じく偶然の働きで実に唐突に、最も手痛い目に遭うというのも興味深い)使い古されたストーリーを使うことで、その基本のストーリー自体はマスクさせたような、実に不思議な味わいのある映画だった。映画からストーリー成分の重要性を抜いてしまう事で、映画だけが伝えられる要素を純粋培養させたような。ううむ巧く言えないな。いろんな読み取り方が出来る良い映画です。いやそれって要するに西部劇?