8/27 デヴィッド・クロス+是巨人@吉祥寺スターパインズ・カフェ

今回は記憶がなるべく揮発しないうちに書いておきたい。インプロの感想というものは毎度思った事をそのまま書いているので見当違いな事になってるかもしれないがご勘弁を。
キングクリムゾンの70年代頭にバイオリンを担当していたデヴィッド・クロス氏が来日との事でライブを観に行く。以前たまたまブートで拾った「MIRRORS」という題のついた1974年のライブ内でのバイオリンがとても好きなので(思えばクリムゾンが本当に好きになったのはこのブートを聴いてからだった)昼過ぎまで寝て万全の態勢で吉祥寺へ。会場内はかなりの盛況。
最初に是巨人(drum:吉田達也、bass:ナスノミツルguiter:鬼怒無月)でのライブ。主に2ndアルバムから。思うにちょっと80年代クリムゾン的なメカニカルな細かいフレーズ多めの選曲なのかもしれない。テンションは非常に高く気持ちのよい演奏。途中で吉田氏のMC、今日のライブでクロス氏とクリムゾンの曲をやるという話がどこぞで出回っているが(2chプログレ板のあのスレか?) 今日はやりたくないとクロス氏が仰せとの事。そんな訳で是巨人の3人のみで太陽と戦慄パート2をを披露。…いいのかそれで? 笑 鬼怒氏が始める前にポツリと一言「天覧試合みたいだな」。DVDでクリムゾンの太陽と戦慄パート2は3パターン観ているが 3人でも負けていない。ただやっぱり残念なのは気持ちよく上昇していくフレーズの一番上に収まるべきバイオリンの音が欠けているので音像にスケール感や繊細さが足らない事。しかし生演奏で観ると本当に大変な曲だ。
そして途中で吉田氏から大ショックな発表が。なんと9/5のペインキラーは中止との事! いきなり天国から奈落の底へorz この間の日曜のDOORSではそんなそぶりも無かったので急な事なのだろう。元々9/2,3の中国ツアーのついでに日本に来る予定だったのが 中国ツアーが中止になったので(政情のせいか?)ゾーン氏とラズウェル氏の来日も無くなってしまったのだとか。一応払い戻しもあるが、知らずに来てしまった人の為に 吉田氏、当日PITINNでやるアルタードステイツからナスノ氏と出来れば内橋氏(内橋氏と吉田氏は去年アルバムを出した)、そして灰野敬二氏(おお、サンヘドリンの出来上がり)そしてかねてより噂のあった当日渋谷でライブをしているファントマスからマイク・パットン将軍に連絡してみた所、乱入に乗り気だとか…ああいい人だな一応狂人なのに 笑 とまあ、9時半スタートでパットン将軍の乱入まで待ってたら何時に終わるか見当もつかない実質、「吉田達也の叩きっぱなし番外編」となりそうなのでした。そこまでフォローに奔走せざるを得ない吉田氏は大変だなあ…もう当日物販も買っちゃうよ 涙 ちなみにこのMC間鬼怒氏がBook of saturdayをBGMに弾いていたのでなんだかもういいかって気持ちになりかける 笑
さて1時間15分程で是巨人単体のライブが終了すると、しばらく休憩を挟んでクロス氏の登場。で、是巨人の3人と共にインプロ合戦に。合戦て。というのも4人のインプロはまさに英国紳士と日本のおっさん3人組の大人げないバトルだったのだ…(大袈裟)
1曲目はクロス氏のイスラエル調の音階による朗々としたリフを軸に素晴らしいシンクロ具合。というか、クロス氏を主役だからもり立てようとかへりくだった事は余り考えていない3人組(主にドラム)がどうこの人と絡んでいくか、模索しながらもガツガツ色んな展開を積極的に提示して来るのをクロス氏が積極的にジェスチャーや表情で方向を示しながら上手いバランスで絡み合い着地した感じ。さっきまでの是巨人のアッパーで凶暴な雰囲気が氏が入ると急にイギリスっぽい音になるから面白い。こういう音は今まで是巨人では聴いた事が無かった。クロス氏のバイオリンは良いなあ。エレキバイオリン自体そんなに今まで数を聴いた事が無いのだけど、しっかりした安定感、繊細な雰囲気、そして音に奥行きがある。人柄までは存じ上げないがメランコリックで夢想家なのだろうか?細かい所まで風景の見えるような聴き込める音だ。
2曲目はそのパワーバランスがかなり是巨人側に傾く。まあ元々長年やってる息の合った3人と繊細なバイオリンだとどうしても後者の方が分が悪い。しかも3人は手抜き無しの全力で当たって来る。ナスノ氏も鬼怒氏も積極的に新しい展開や音色を提示してどんどん曲調が変わっていくのでこんな集団と初聴きで戦わなきゃならないのは大変だ 笑 またうまく役割分担が出来ていないので、例えばバイオリンが音を弾き始めるのと吉田氏のシンバルを叩き始めるタイミングが何度もシンクロしてしまって(ここで高音を入れるべきだと思うタイミングが同じなのだろう)バイオリンの音の出だしがシンバルに消されてフニャフニャに聴こえてしまいこりゃ駄目だと何度も入り直しを試みる場面も。しかも今日はドラムの圧力が普段以上に高いような? 磨崖仏語で歌い出す、さらに叩き出してプログレどころかハードコアパンク色まで出て来るものだからクロス氏はとうとうついていけず苦笑。人の裏声もバイオリンと音域や音色がかぶるから同時には鳴らしづらいのだろう。着地点が掴めなくなってしまったのでとりあえずなし崩し的に終わらせる。マグマ的混沌と爽やか繊細などちらかというと秩序正しいクロス氏のバイオリンは相性が悪かった…笑 3曲目からは少しイニシアチブがクロス氏に戻って来る。さすがにこれはまずかろうという事か、譲り合いの精神が生まれて来る。鬼怒氏は去年のクロス氏の来日時もセッションしただけあって合わせるのが上手い。 しかしクロス氏…ドラマーに苦労するのは宿命なのか?
途中でクロス氏のMC。メンバーの名前はカンペを読みながら。明日のピアニストの千野氏とのセッションでは新しくアレンジした太陽と戦慄パート1を披露するからよろしくとの事。思わず後ろのメンバー苦笑。アンコール後にはクロス氏の穏やかなアイルランド民謡のようなメロディーを軸にまったりしたセッション。これは個人的な嗜好だが こういうずっとゆっくりしたメロディーの後ろではリズムにもっと根本的な変化が欲しかった。って大好きなスクエアプッシャーの名曲Iambic 9 Poetryを思い出しただけなんですけどね。(単調で物憂いシンセの繰り返しの背後からドラムが少しづつ立ち上がって来てメロウで抑制された雰囲気を維持したままリズムが気持ちよく高揚していく)
そんな訳で今日のライブは終了。色々問題もあったけどやはり良いライブでした。というか相性自体はあんまり良くないんじゃないかと思ったのですが(クロス氏にもっとアグレッシブさがあれば…とか、ベースの音がもっとクリーンでもいいんじゃないかなあ、とか、ドラムはもっと無音部分を重視してもいいような…いやでもあの強迫観念的音数の多さが空白を逆説的に提示しているような気もするが如何せん高音がバイオリンとぶちあたるのが辛い)それでも曲としては大体高い水準で纏まっていたと思う。思わず感涙してしまうような美しい瞬間も多々あった。またこれに懲りずに来年も来てください。会場を出た時、今まであまりに気を張りつめて聴いていたからか、アドレナリン分泌の低下と共に腹痛と吐き気に襲われ青ざめて帰宅 笑。