いくつかレビュー

相変わらず面白いな水曜Wanted!は。最近ここで流れてて気に入った曲を買いにいくパターンが増えている。録音して寝て、朝会社に行く前にMP3にエンコードしてタグをつけておいて 日曜の昼からダラダラしながら聴き 気に入ったらそのままAmazonでボタンを押してしまう そんな恐ろしいパターンが出来ている。
ここ数ヶ月に買って面白かったものをいくつか紹介。

以前ここでも紹介したジャズサックス奏者(と片付けるにはあまりにも言葉足らずだが)、ジョン・ゾーンのドキュメンタリーDVDBookshelf on Top of the Sky / [DVD] [Import]を観て、ライブ映像をもっと観たいと思い同じく彼の主宰するレーベルTZADIKから出しているMASADAのDVDを購入した。

Live at Tonic 1999 [DVD] [Import]

Live at Tonic 1999 [DVD] [Import]

MASADAは彼のルーツであるユダヤ民族の音楽(独特の物憂い音階はジプシー音楽、ひいては遠いこの日本で言う所のチンドン屋音楽の音階に相似である)としてのジャズを作り続けているクァルテットで ここではいつもプギャー!とフリーな金切り声を上げているゾーンのサックスも落ち着いて歌っている。前に買った彼のKRISTALLNACHTというアルバムの1曲目で実に好みな暗く茫洋としたユダヤ音階によるソロを披露していたが 普通に吹いてもやっぱり上手い。このDVDはじっくりとTONICでのライブを収録していてカメラワークもシンプルながらなかなか秀逸。で、そこで興味を新たに持ったのがMASADAのドラムであるJoey Baron。彼のドラムは手数の多い時も 淡々とシンプルなパターンを叩いている時も本当に上手いと感動してしまう。またソロでのリズムの発想の豊かさといったらない。古典的なジャズから現代的なテクノやロックの影響まで垣間見えるような幅の広さと それを上手く自分の物にして混淆させるセンスの良さは今まで聴いて来たドラマーの中でもずば抜けていると感じる。で、ユニオンでソロ作が見つかったので購入したのがこれ
Down Home

Down Home

ギターにBill Frisell、アルトサックスにArthur Blythe、ベースにRon Carter。ドラマーのリーダー作なのだからドラムが主役なのかとおもいきや この面子を集めただけあって普通に良い軽めのジャズを演奏している。ドラムはたまに少し前に出て来る程度なので肩すかしを食らった思いだが この面子を集めただけあって普通に格好よい。曲調は色々だが特に面白いのは3曲目のWide Load。ファンクっぽいコードが1つだけ延々と繰り返すシンプルなパターンの上にそれぞれのソロがまったりと絡む構成だが そのおかげで全体を牽引するバロンのドラムの上手さが強く伝わって来る。テクノの聴き過ぎで最近までシンプルなドラム自体にはあまり何も注意を惹かないようになっていたのだが(打ち込みで組み立てるその音自体には大して意味がないから)この人の音は1音1音聴く価値があるなあ…そんな感じです。それにフリゼールのギターはいちいち的確で格好いい。ジャズギターってなんなのか正直よく判らないんですが こういうのはいいもんですね。似たようなワンコードの曲に4曲目のWhatがあるけどこっちも凄く良い。難癖をつけるならアーサー・ブライスのサックスも上手いんだけど ちょっとこの中では上品すぎてもうすこし図太い位の方が好みだったかな…いや胃もたれしちゃうかも。

意味のないものには意味がある(DVD付)

意味のないものには意味がある(DVD付)

ホッピー神山氏の新譜。まず強烈にフランク・ザッパをイメージする。まんま大文字の変態インプログレだったりブラスバンドだったり変なテクノだったりそこら中に挿入される意味不明な言語のようなものだったり パーツ別に見ていくと大変キッチュでポップで聴きやすいのだが それらが細切れになって真面目に個別に聴き込もうとする頭をあざ笑うかのように次々と風景を変えていく。深夜にラジオの周波数をどんどん変え続けているような気分。これは…あの状態だ。泥酔しきったり眠りに落ちる一瞬前の、誰が何か喋っているのはわかるが全く言葉の意味を捉える事が出来ずに宇宙人が何か言っているように聴こえる状態。いうなれば完全にゲシュタルト崩壊。全く意味が無い。しかも恐ろしい事に神山氏は細心の注意を払って全力で壮大な「意味が無い」状態を構築しようとしているとしか思えない。完成度の非常に高い「意味が無い」という状態自体に意味を持たせているのだ。しかも聴きやすい。タイトルも読まないでアルバムを買ったので(ひどい)、そこまで思い至ってからジャケを手に取りタイトルを見た時にちょっと鳥肌が立った。