フジロック、2日目(30日)

朝は嘘のような快晴につき お決まりのテントサウナで7時起床。

風邪気味で消化器が弱っている所に昨夜まで暴飲暴食をしまくったせいか(朝からうな丼と餅豚丼をかっ食らって昼にはヘブンでピザまるまる一枚平らげビールとワインを水代わりに という具合ですから)頭が痛いわ消化器はまったく動いておらずいやな汗が。そんなわけでさっぱりするべくまた湯沢の駒子の湯へ…。

苗場ー湯沢の無料のシャトルバスは片道40分弱で この涼しい車内で熟睡できるのも重要なポイントであります。ああなんかもう全然当初の予定と違う 笑
しかし東京23区内から一歩も出ない生活を続けておりますと ちょっとした長閑な風景も何か心にしみいるものがありまして 苗場の山の中よりも むしろごく普通の水路だとか 山ぎわに走る線路と民家と緑のコントラストだとか 生活感溢れるものに惹かれるものがあります。


会場に戻るとあれだけ超快晴だったのが突如土砂降りに。何やってんだ…
どのみち次はPRAXISを観る予定なのでフジで唯一の屋根付きのステージ、レッドマーキーに早めに向かうと ああ…なんてこった なんかメタルっぽいThe Black Velvetsのライブに どう考えてもお前達興味ないだろうみたいな雨宿り人がみっしりといや全く隙なくみっしりと屋根の輪郭内になんとかおさまろうと密集しているのです。うはー信じられねえー勘弁してくれ。雨は一向に勢いやむことを知らぬ様子。しかしですよ だがしかし!これでこのままPRAXISまで雨が降り続けたら…このテントは満員のままライブが始まる事になるわけで 笑 それはそれで面白すぎる光景なのでちょっと愉快でもありました。ちなみになんとか入り込んだマーキーで聴いたこのBlack Velvets 音自体は好みではないのでなんとも思いませんでしたが(客観的にみて良いバンドだとは思いました)最後ボーカルの人がドラムの前まで来て フロアタム?をばんばん叩いたのがすごく良いと思いました。なんかリズム感あるなあ というか。いい音してました。
PRAXISのセッティングは難航しているようでした。スタッフ達が機材をステージに出したはいいものの どうレイアウトしていいのかわからない様子で そもそも今回のPRAXISはメンバー構成はどうなってるのかすら謎のまま。 やきもきしながら見ていると漸く予定の時間になってメンバーらしき人達およびラズウェルが来てスピーカーをあっちにやったりこっちにやったり。そんなわけで30分押しのスタートでした 外は相変わらずの豪雨で マーキーの大きな布ばりの屋根の下で 固唾を飲んで演奏を待つ聴衆の耳には深い雨音が響いています
今回のメンバーは ビル・ラズウェル DJ高田 あと誰だったのかな?あのドラマーは…バンダナを顔に巻いてて今調べても誰なのかよくわからない…そして なんと今回バケットヘッドは不在。おいおい主要メンバーじゃん。そしてその代わりになんと 近藤等則がトランペットで参加という予想外の展開に。
音は 去年のプラクシス(ラズウェル、バケットヘッド吉田達也)が一応曲が決まってはいるもののほぼインプロが主体だったのに較べ こちらはアルバムの曲を再現する方向に近い 非常に重く深く湿度の高いヒップホップードラムンベース系の音。バケットヘッドの西海岸な乾いた雰囲気とは違う…
いつも裏方に徹している感じのラズウェルは相変わらず高速でベレベレとベースをつま弾きながらも結構前に出てくる感じ。あの巨体で迫力のある人が何度もステージ前方でドラムに向かい合いステージに背中を向け低音を絞り出すのは格好いい。DJ高田という人は…良く知らないのだが スクラッチ嫌いな自分でも中々面白いと思う事が出来た。普段大嫌いなんですよひたすらキュッキュキュッキュやりたがるDJ…そもそもあの音色が好きじゃないのですが こちらはその音色にも気を使ってなるべく美しく鳴らそうと砕身しているようでした。 近藤氏は…近藤氏はなんか晩年のマイルスみたいな格好だなあ…子供の頃テレビでみたイメージと随分変わっててびっくりしましたけど。こちらはトランペットにエフェクターをつないで いろいろいじりながら吹いていました。椅子に腰掛け 俯き黙々と吹かれるトランペットから 深いリバーブをかけた細く芯のある音がねじれながら渡っていきます。個人的には思い切りアッパーなインプロっぽいのを期待していたので肩すかしではありました。あとドラムも非常に素晴らしいのですが なにぶんPRAXISを初めて聴いたのが去年のフジな訳で…吉田氏のテイストを至上としてしまいますが(お前は刷り込みかけられたヒヨコか) 同じユニット名で全く別物として捉えればやはり良いライブでした。しかし45分という持ち時間は短すぎて ひょっとすると30分押してたせいかもっと短かったかもしれず 完全に音が乗り切る寸前で終わってしまったのがとても残念でした。80分くらいなら最高だったんですけど。あとあの坊主のごつい司会者は出て来てほしくなかった…誰なんだあれは。あとなんか変な着ぐるみが一瞬視界を横切ったような…
さて 問題はここからですよ!プラクシスが終わったらなにやら良いと評判だけきいたThe California Guitar Trioにギリギリで観に行く予定だったのですが この30日はフジ史上最高の動員数だったようで しかもプラクシスが大幅に押していた事もあり マーキーより最も遠い位置にあるオレンジまでなんとかかる事40分…まだ昼にもかかわらずうんざりするような混雑で(こんな事去年はほぼありませんでした!)疲弊しきって辿り着くと既にアンコール前orz そして、そして、ステージ左にはなんとキング・クリムゾンのベーシスト トニー・レヴィンがーなんだあああそれはああああorzorz
ええもうアンコールだけ拝聴いたしましたが良かったです…もっと聴きたかった。アコースティックのギター3人が淡々と繊細なフレーズを重ねプログレをやってしまうという感じで(後で調べたらこの人達ロバート・フリップのお弟子さん達なんですね。音源自体にしか興味がないとよくこういう無知さで失敗しますorz)儚げなギターが今にも崩壊しそうなほど複雑な美しい模様を正確に編み出していくのがすごい。うええん。
彼らが終わってしまうと ホワイトのサンボマスターを横目にオアシスまで戻って飯をすませ 再びオレンジに戻ってきました。サンボマスターは好みではないけど大変良いライブをやっているようでした。観衆を冗談みたいな暑苦しさで煽りまくって若手とは思えない巧みさで曲の世界に引きずり込んでいました。観客多かったな…
エイドリアン・ブリューのステージは19時40分からで もう15分もすれば始まるのに人はまばらでした。難なく前の方に行くとなんか…客層がフジの平均層と明らかに違う。 年齢層高い メガネ率高い そして野外に向いてない感じ 笑 自分もそう見えてるんでしょうか? セッティングでは本人直々に出て来て調整。歓声を上げ呼びかける観客に応えたりと非常に機嫌よさげ。しかしタオルを首にかけて肌着のような白シャツを着ているのはどうなんだろうな… 非常にリラックスした感じで調整をして 一旦脇に戻る事もなくそのままライブを開始。さてこのエイドリアン・ブリューという人 ファンからすれば何を今更でしょうがキング・クリムゾン現行メンバーのギタリスト&メインボーカルです。というかそれ以上の知識は全然なく 自分の持っているクリムゾンのCDは全部1974年のRED以前の彼がいない頃のばかりなので 唯一観た事があるライブの映像から なんか随分一人だけ空気の違う明るい人がいるなあ…というイメージしかもってませんでした。しかし そんな事はどうでもいいのです。最初の1フレーズから完全に魅了されてしまいましたから。とてつもない技量の持ち主である事は即わかりましたが 音の解像度が高いというか 生きているようだと感じるのです。1曲終わった時にはすっかりファンに 笑 バックのベースMike GallaherとドラムMike Hodgesも本当に上手い!なんでこんな僻地ステージに出てるのって思うくらいガチで上手すぎです。途中で古くからの付き合いで、などとブリュー氏が紹介していたように息がピッタリで。そして3人はクリムゾンの曲もいくつかやってくれました…帰宅してから慌てて彼が加入してから出したアルバム「ディシプリン」を買って来て記憶の限り探したのですが 少なくともその中からはFrame by FrameとアンコールにThela Hum Ginjeetはやってましたね。あと冒頭にdinosaurもやった思います。ふぉおおおおやっぱりすげえ。初めてFrame By Frameを聴いたのが生演奏で良かったよ…いい曲です。今力一杯リピートでかけてます。あの重層的なドキドキする響きが生で繰り出されていくのがすごい。正直、今まで打ち込みの技術を極限まで凝らした音楽を多く聴いてきたので こういうシーケンシャルな人力演奏にはまったく鈍感になっていたのですが 生で聴くと表現の空間の広さが圧倒的に違う。ああ この響きはこうやって解釈すればいいのか!と目が覚めるというか。このステージを聴いているとどうも脳内サウンドカードが新調されたみたいで笑 後で家に戻ってCDをかけてみると あの時の音の広がりかたを基に脳内でリアルに展開されてくるようになり 色々曲の印象も大きく変わって来て 聴くのが楽しくてしかたありません。しかしもっと予習してから臨めばもっと面白かったかもな…ううむ
ライブが終わり我に帰るとまた雨が強く降り出しました。さらに雷鳴も…グリーンまで引き返してくるとFatboyslimがDJ中。3万人収容出来るというグリーンステージでDJが しかもトリを務めるというのはフジ史上初の事ですよね? 大きなステージ全面が眩いスクリーンになっていて本日誕生日だという相変わらず上機嫌なノーマン・クックはスクリーンに埋め込まれたとても高い位置のブースでDJをしており VJの映像とノーマンが交互に映し出されて…完全にアイドルです 笑 この日は朝の開場と同時に3Dメガネが先着1万名に配布されたらしく スクリーンが3Dで飛び出して見える他に光がスマイルマークになって見えるという特殊仕様だったそうです。馬鹿です 笑 彼のDJは特に上手い訳でもなくて ひたすらベタに大ネタをかけまくるある意味非常に退屈なタイプですが あの特上の笑顔にみんな惑わされてついのせられてしまう訳です。そういう意味ではちょっと魔法がかってるというか。ちょうど自分がグリーンの真正面に着いた時には 雷鳴がすごい事になっていてもちろん大雨だったのですが 巨大なスクリーンに目一杯アップで映し出されたノーマンはカメラに向かって両手を合わせて差し出したかと思うと 手の中から小さな蛾?がいいタイミングで飛び立っていってそれに歓声が上がるという…なんというか…確かに魔法をかけているようでした。
しばらくそれを見物した後(DJ自体はいつも通り退屈で… 目一杯酔っぱらっていれば別でしょうが)あまりにも雨がひどいのでテントに戻り さっきのライブの事を思い返しながらぼーっと雨音と雷鳴に聴き入っていました。そういうのもテント生活の楽しみだったりします。ただ今思えば失敗したなと思うのは 靴が浸水してテントの中に入れるのも億劫な為 テントから足だけ出していたら ブヨに3発食われました。
ブヨは蚊と違い 食われた時は(蚊と違い、文字通り齧りつくのだそうです)大してかゆくもなんともなくて血が出てるな、という程度ですが 1日経ったあたりから強烈に腫れてかゆみと痛みが襲い 体質にもよりますが少なくとも1ヶ月は完治できないのです。というわけでこの文を書いている今も左足の足首に噛み跡が3つ 腫れはやっとひいたものの水ぶくれができています。もう本当に山で足をさらすのは危険ですよ!ブヨは綺麗な水がある場所でしか生息できないのでまだ汚染されきっていない自然が残っている証拠でもあるのですが…
ブヨに晩飯を御馳走しながらいくらか寝て 次はレッドマーキーテイ・トウワを観に行きました。彼の曲はディー・ライトの頃から結構好きなのですがDJは未聴。 そんな訳で結構期待していたのですが 感想は今ひとつ…むしろ失望の部類でした。下手では決して無いのですが フジという場所を考慮しすぎたのか とにかく大ネタかければいいんでしょ!の嵐…自身の代表曲をかけるのは結構なんですが アンダーワールドのTwo month offをこんな貴重な時間に聴かされるのはもう勘弁です!(この曲は大変好きなのですが)しかも客はただ単純に盛り上がってるし…なんかここらへんから気分が悪くなってきて(今思い返せばブヨのせいで熱が出たりしてたのかもしれませんが)フロアの空気と波長がまったく合わなくなり VITALIC、ガルニエとそのまま居続けたのですがどれも今ひとつでした。もっと落ち着いたじっくり聴かせる音が欲しかったのですが とにかくもうVITALICは自身の曲がいくつもフロアアンセムになっているだけあってバキバキにアゲまくりで観客はとりあえずワーワー上がりっ放しだし ガルニエも大ネタばっかりで正直しんどかった…地味に組み立てていってくれるのを期待していたのですが。どれも客観的に見れば とっつきやすくて大変良いプレイだったとは思います。あと…昨晩から高度な生演奏の変拍子気味な曲ばかり聴いていたので単調に聴こえて仕方なかったのかもしれません。でももっとミニマリスティックで地味なテクノならイケましたよきっと! 対極ならば大丈夫。
そんな訳で2日目深夜の部は不完全燃焼でしたが まあブリューが観れたから十分もういいや…とまたライブを反芻しつつ眠りについたのでした。


3日目の感想はまた明日。3日目は朝一番と、やはり恒例夜のホワイトでした。そして例の苗場食堂…高円寺百景も書けるかな?