胃痛は急速に改善の傾向。家で大人しく寝て過ごす事に。
弱った時の食事として ベーコンはカリカリに 大きく切ったキャベツと刻んだ干し椎茸は軽く炒めた上に トマトの水煮とコンソメを放り込んで煮込んだスープを作る。香辛料はアニスシードと粒黒胡椒を少し。食事が美味しくなければ病人になり甲斐がないというものだ。冬キャベツは格別甘く柔らかく溶けるので胃には申し分ない。
昼過ぎからはツタヤで借りてきたジャン・コクトー監督の「オルフェ」を観る。去年観たアニメの中でも屈指の出来だったテクノライズという作品の終盤に何度か出てくる 「小鳥は指でさえずる」「鏡は思考力を増大させる」「一杯の水が世界を明るくする」等のラジオから流れ出るアナウンサーの謎めいた言葉が気になって仕方なくて 調べてみればこの映画が元ネタとの事で観る事にしたのだ。具体的な記憶力が皆無に等しい自分でも暗唱出来る位好きな言葉だ。
詩人オルフェウスの神話を下敷きにした物語で(日本にもある地獄から妻を連れ帰る途中で振り返ってはいけないのに云々という奴)売れっ子詩人でちょっと頭のネジが抜けているオルフェが美しい死神に魅入られて地獄と地上を行ったり来たり、巻き込まれた人々が翻弄されまくる物語(と書くともるで萌えアニメのようだ…)。話自体は単純なのだがコクトーの詩的な感覚をそのまま作品に持ち込んでいるので普通の映画のつもりで観ていると肩すかしを食らいそうだ。素晴らしく雰囲気映画。(そういやテクノライズも壮大でハイレベルな雰囲気アニメだったなー)幻想映画なので逆回し、白黒反転、別の映像をスクリーンに投影して撮影した合成など原始的な特殊効果が結構使われている。今からすれば非常にたわいもないレベルのものだが白黒映画のこういう素朴な作りの作品で出てくると不思議に違和感を感じない。却って想像力の働く余地があって後引く美しさを感じる。ちなみに作中でオルフェが女王の手袋を手に着けるシーンでの逆回し効果、The Chemical BrothersのBlock Rockin' BeatsのPVでクラブにいる黒人女性が手袋を嵌めるシーンがパクってますね?多分そう。あのシーンは唐突な逆回転で格好良いので印象に残っている。
テクノライズに使われていた前出のラジオから流れる言葉はそのまんま、死神の車のラジオから流れる詩句だったようで作中のオルフェもすっかり魅了されていた。あれは本当に素晴らしい。フランス語で抑揚乏しく繰り返されるあの寒々しい魅力はテクノライズ中で日本語になっても遜色ない物だという事が確認できて意外な発見だ。いやーどっちもいいよ。
最後にマリア・カザレス扮する死神が傲慢で何考えてるか今一よくわからなくてイライラするが気に入ったので