11/21 法政祭 ALL NIGHT ROCK

出かける前に急に雨が降り出して雷鳴。間の悪い東京湾付近限定のピンポイント爆撃に自転車で出かける計画の出鼻をくじかれてしまう。一過性のものなので風呂に入ったり時間をつぶしているうちに9時を回ってしまい やむをえず雨の中強行突破する事になった。
法政大学市ヶ谷キャンパスに到着したのは11時前。学内の店類は大体終了していて 騒いだり潰れている学生だらけで異世界の様相だ。自分のいた大学は7時頃にはさっさと帰れと警備員に全員締め出されてしまうような所だったので羨ましく感じる。
学生会館に着いてタイムテーブルを発見すると 吉田達也勝井祐二のユニットは10時55分からとの事。慌てて入ると若干押しているようで11時時点では未だセッティング中だった。助かった。この前のライブに途中から入ったら実はトップバッターで見逃しの悪夢が掠めていった。
会場はステージが広く、床は年期を感じさせる木のタイル。床に座ったり後ろの座席に座ったりと結構くつろげる感じの作り。床がちょっとしなる感じとその広さ、年季の入った様がなんとなく故新宿リキッドルームを連想させて親しみが湧く。

開始は11時過ぎ。勝井氏の音は今までROVOでしか聴いたことがなくて 非常に判りやすくて流麗で皆のまとめ役というイメージしかなかったのだが 今回の音はいつも背後にしょっているメンバーがいない分、また今回は純粋にインプロ(多分)である分 フットワークの軽さを感じる。全体の雰囲気は確かにROVOに似ているのだが ドラムが変わるとこう違うのか!というのがはっきり判って面白い。ROVOのリズムはツインドラムの微妙なズレも相まって 舌で溶け崩れていく砂糖菓子のような 甘く過剰で目眩のする味なのだが 吉田氏のリズム担当と表現するよりむしろばりばりと「歌っている」ようなドラムが合わさると 激しい雷雨の中で先の見えないジェットコースターに乗っているような感じになる。また今回はドラムやボーカルにもエフェクタを使っていて バイオリンの音に強くリバーブのかかったファルセットがゆっくりと音程を変えて長いトーンで合わさると とても人の声とは思えず 思わず拝みたくなるような荘厳さが生まれる。曲は全部で3つ。15分-10分-5分位?30分強の一瞬だった。しかし勿体ないというか インプロはその場その時にしか存在しない音楽だというのを痛感する。あれをもう一回聴きたいと思ってももうこの世のどこにもかけらもない。超一期一会。こんにちは大好きですさようなら。でも音楽は元々そういう性質だから美しいのかもしれないな

12時からはシカラムータ。初聴き。今まではフロアに座って聴いている人が多かったのが徐々に人が増えてなんとなく全体のテンションが高い。開始っぽい雰囲気と共にどっと前の方に客が押し寄せる。こういう風景、ひさしぶりに見た。最初に大熊氏から、このホールを取り壊す事についての話。ホールの精霊に捧げるという事で葬送曲 らしい。もの悲しいゆったりした旋律は段々強い拍を刻みだし観客達は体を動かしだす。あー楽しいなこれは。チンドン屋のスラブ系と日本民謡の折衷っぽい音楽をベースにアヴァンギャルドやらプログレやらごった煮のような音だ。そして最大の特徴は多分 変拍子且つ楽しく踊らずにはいられないという事。酔っぱらい率が高かったせいもあるが 後半フロアの前方はモッシュも起こる狂乱の渦に。しかし面白いバンドだ。決して全員が皆上手い弾き手だとは思えないのだが 全てのパートが合わさったときのグルーヴ感がもの凄い。音の構成が良いというのだろうか?自分の知識ではまず近い存在に渋さ知らズの音を連想したが あれよりもっと身軽で、変幻自在でスリリングな感じだ。途中で明らかにRUINSだろうそれは。という感じの曲もあり なんでも飲み込んでしまうのかとニヤニヤする。あとヴァイオリンの太田氏。演奏もいいし歌が上手すぎて驚いた!イスラム系っぽい唸るような歌からいつのまにか浪曲調に。ソロパートで一番持っていった人だった。

次はララバイブラザーズというバンド。元々2人組なのをドラムとウッドベースが加わっているらしい。シカラムータが終わってざーっと客が引いてしまったのをネタに卑屈なトークを始終展開していると思ったら どうやら元々そんな感じらしい。オフィシャルを見るに。http://www.ismusic.ne.jp/lullaby/main/index.html
音はゆったりしたボサノバっぽいバラード多め。ドラムの人以外演奏的にはどうかという感じもしばしあるが 曲自体がとても良い感じ。ゆったり寝ながら聴くといい感じで空いた暗いホールに似合っていた。

ここで酒が欲しくなってセットチェンジの間に外に出ると 気持ちの良い冷気に雨は上がって大粒の星が沢山瞬いていた。途端に このまま幸せな気分で空を見ながら自転車を飛ばしたら楽しいなという思いに駆られ 全部観ないのは残念だがそのまま帰る事に。キングクリムゾンのライブ音源を聴きながら市ヶ谷から川沿いに誰もいない道を進んでいると 美しい夜だという感嘆の言葉が何回も鳴った。4時過ぎ帰宅 6時就寝。