なりゆき上な感じで観た映画2本

1988年アメリカの映画「愛は霧のかなたに
1961年これもアメリカの映画「King of Kings」を観る。
愛は霧〜は原題はGorillas in the Mist、
ゴリラを研究していた実在の学者、ダイアン・フォシーの物語である。
18年間素人から始めてゴリラの研究を中央アフリカで続け、密猟者に対しては過激過ぎる程の行動を取り、
最後には何者かに殺されるのだがその真相は現在も謎のままである。
(周囲は敵ばかりだったので思い当たりすぎるのだろう)
見始めた当初は自然や動物をネタに、甘ったるい恋愛映画でも繰り広げてしまうのかと思っていたが、
全然そんなことはない。これが意外と硬派な出来で、容赦ない密猟者達への報復や、
森の中で遠慮無しにタバコを吸いまくり、ゴリラを溺愛するあまり「私のゴリラ達」と公然と言い放つ様は
故人をいたずらに美化していない様で好感が持てる。
またこの作品の見所は現在300頭もいないらしい絶滅寸前のマウンテンゴリラの群れに、
実際に役者達が入り込んで撮影している点にある。メイキングにも少しその様子が入っていたが、
役者の人達が実に羨ましい!あんなに接近しても大丈夫なものなんですね。
もちろん、複雑な演技やアクションシーンでは作り物を使用しているのがわかるが、
それも違和感を感じない良い出来になっている。
子供のゴリラとダイアンが触れあうシーンは本当に微笑ましいものです。

それにしても、密猟者はゴリラの手首を切り落として灰皿として売るとか言ってたけど、
そんなの使う人の神経が知れないな…
彼女の死後、ゴリラ保護の為の財団が設立されて密猟者は激減したらしいのだが、
最近の内戦等経済の悪化により、再び密猟が急増しているらしい。
現在は映画の中の時代と違って動物園でマウンテンゴリラを飼育する所は無いのだが、
どうも個人所有の動物園(そんなの漫画とかの中だけだと思ってたよ…)で
観賞する為に密猟を依頼する人がいる様なのだ。
まあ、人間同士が訳もなく殺し合える位なんだから、
ゴリラの為に考え直せと言ってみても無駄な気はしますが…


もう一本、「King of Kings」は、イエス・キリストの誕生から死までを壮大な予算で
聖書になるべく忠実に描いたもの。ノリとしては「十戒」に少し近いかも。
どうも無宗派で宗教に懐疑的な自分としては、この聖書の朗読調で(ナレーターはオーソン・ウェルズ!)
だらだら淡々と続くクソ長い映画にどうも冷笑的で入り込めなかったのだが、
美術的にはかなりいい線はいっていると思う。
マリアが画面に出ているシーンはなんとなく昔のジョットやマザッチョの宗教画のようであるし、
(もちろん意識しているだろう)
エスが十字架にかけられたシーンなんかも抜けるような青空がバックに、
まるで何かのビデオクリップを観ているかのようなデザイン的な美を感じる。
(ちょっとイエスが健康的すぎるような気はするが)
また、ローマ軍も存分に活躍しており、考証的にはかなりいいかげんなものだと思うが
長槍に盾の厚い隊列でユダヤ人の叛乱を圧倒していったり、
騎馬の隊列がゲリラに襲われて乱戦になるシーンなども、
エイジ・オブ・エンパイアで良く見るような奴のリアル版といった趣でなかなか楽しい。
聖書の解釈的には全く無難。処女懐胎への言及は全く無し。
奇跡についても具体的な表現はなるべく避けている。
物語としてはグダグダだが、まあ、聖書の入門編且つベン・ハー十戒等の壮大な絵が見たい人にはおすすめ。
あと、サロメはなかなかエロくて良かったな。