どんよりする傑作
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/12/18
- メディア: 単行本
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いわゆる問題作なのでそこら中のブログに紹介されてるだろうしあらすじは割愛するが、とにかく少女達が悲惨な目にあう、またはその運命を示唆する所で終わる。しかし必ずその絶望に至る道の途中にはすばらしく希望に満ちた時期があって、それが一層のやるせなさを引き出す。しかしながら、成す術の無い絶望がすぐそこに潜んでいるからこそ、そのひととき少女達はたとえようも無く美しく輝いている。うーん最高やね。でも、生きた時間の差こそあれ、大抵の人の一生って長い目でみればそんなもんだよね。俺はうっかり、あろうことか自分の人生を少女達の死に逝く様になんとなく重ねていた。これが後味の悪さその1。
で、忘れてはならないのが主人公たる少女達だけでなく、その敵ともいえる大人達。言うのも憚られる酷い行いを日常行事の一環のように行っているにもかかわらず、その彼等にもごく真っ当な、自分の娘や妻をいとおしむ気持ちや、当の少女達を悼む心や、人のために自分の死をもためらわない瞬間さえ併せ持っている。ああこれが人間ってもんだよな。それが後味の悪さの2。
具体的な残酷描写は前半のごくごく一部のみに留められていて、大半は他愛も無い少女達の日常を描いているにもかかわらず、1冊読み終えたあとはそれが自分でも信じられないくらい、全編通してひどく残酷なものを見てしまったなという感覚が残る。なんというか、生きるということの残酷さが。