フジロック3日目(31日)

この日は風呂無し。昨日そんなに動き回らなかったせいもあるが 第一にホワイトステージの1発目 あふりらんぽを観るためである。CMでちらっとライブの様子が流れた時 これは芯があるな、と思わせるものがあったのだ。
30分程前にホワイトに到着すると 朝一発目 そしておよそ朝には似つかわしくないであろう音の割に結構人が集まって来ている。勢いがあるってこういう事なんだろう。ステージには早々にあふりらんぽの2人が出て来て音のチェックをしている。ギターの女の子ことオニはホワイトの十分広いステージに立って弦をギャーンを鳴らしてみてニンマリして一言「気持ちいい〜!」 轟音でカオティックな音で知られる彼女達にしてみたら こんな開放感たっぷりの(この時間は完璧な快晴だった)ステージで、バンド史上最大の音が出せたんじゃないだろうか? それは最高だろうなあ。思わす興味津々で見ている観客にも和やかな雰囲気が。そうだ、この音は結構朝の青空の下が似合うんだな。定刻になり2人はステージ衣装に着替え真っ赤な隈取りのような化粧をして改めて登場。オニはなんか苗場スキー板の宣伝パネル?みたいなのを掲げて出てくる。開口一番「おはよう〜」応える観客。しかしそんな和やかな空気も、彼女達が演奏を始めると 一瞬にして驚きと熱狂にとってかわられた。 しかしドラムのピカという人は眼差しがキツくて綺麗でいいなあ。美人なのにものすごい闘志?をむき出しに野獣のようにドラムを叩くのでとても絵になる。どうも最も世に知られているメジャーデビューアルバムの第一弾PVを見ていると 中々良いけど割と勢いと奇天烈さだけで押していってるのかなあ というイメージだったのだが 全然そんな事ない! めちゃめちゃガチです。そりゃ技巧的にどうこう と語るような種類のものではないけど 表現したい物が非常にクリアに見えていて そこへ到達するのに必要な技術は十分有している感じだ。何よりとても清々しくて 時にぐっとくる緊張感もあるし Acid Mother Templeばりのカオスでサイケデリックなガレージロックかとおもったら MCのトークからの流れでなんかよくわからん不思議なエクスペリメンタルで静かな曲になったり。シンプルにノれる曲も多かったりと単純に楽しいライブだった。
朝からいいもん観た。
ライブが終わるとオレンジに移動してThe Peace In Love Percussionsを遠目に木陰でうたたねしながら鑑賞。西アフリカで活躍しているアクロバット舞踏団というものらしい。いくつかのチームに別れているようでステージ上を入れ替わり立ち代わりしながら 民族衣装に身をつつみ 伝統的な打楽器を叩きつつ宙返りしたり組体操してみたりとありえない感じの動きをしている。シンプルなポリリズムで催眠的なリズムがドロドロと緩やかに鳴らされ続けているのを聴いていると やっぱりこのリズム感は日本人には無いなあ と実感する。難易度以前の問題で 一つ一つの音の強度が全然違う。リズムを生み出す事が食う寝るみたいな本能にとても近い所にあるんだろう。
次はヘブンにbonobosを観に行くが 思ったより歌付きの普通のネアカなポップスで退屈だったので退散。テントに戻って休憩。夜に雨がまた降ってくる予感はあったし 昨晩携帯に月曜中に納品が必要な仕事が来たとメールが入っていたので余力を残しておかなければならないのだった。さいあくだ。
日が傾き出して 涼しくなってくるとレッドマーキーROYKSOPPへ。一昨年のライブが非常に良かったので観ておこうと思ったのだが 今回はものすごい混雑具合。音はアルバムの音をもっとアグレッシブに思い切り踊れる仕様にアレンジしまくっていて やはりこの手のテクノ系のアーチストの中では一つ抜きん出た感じ。そして待っていましたeple。一番好きな曲です。長い前奏部分を経て とうとうepleのキラキラしたメロディーの一番最初のフレーズが始まり どっとフロアが湧く。そして自由落下していくような抗いがたい魅力の次のフレーズを希求するフロアはさんざん焦らされ 長い長い最初のワンフレーズの繰り返しの果てに ようやく夢のような次のフレーズが投下され 停滞から一気に動き出した旋律は次第に虹のような煌めきを増して 人々は皆それぞれの熱心さで喜びを表現する。やはり名曲だepleは。フロアであんなキラートラックに変貌するなんて一昨年聴いた時は意外さのあまり ビョークのライブを切り上げて観に来た代償どころかお釣りが来まくると感じたものだ。
今年のフジ3日目の夜は実に困難なラインナップで ロイクソップMOBY→NewOrderと最強に気楽に踊れる選択肢と MOBYを切り上げてTHE MARS VOLTASigur Rosの流れであの世に昇天というどちらも捨てがたい流れ。うごごごご。バーニーごめん。Kraftyも合唱したかったよ。MOBYをGOが終わった辺りで切り上げて(彼も期待に違わずすごく良かった。Goが生演奏で聴けて最高。雨は彼にはあまり似合わなくて残念だった) ついに土砂降りの雨が降り出した悪路をホワイトへマーズボルタを観に向かう。もはやテンション高すぎて雨なんか気にならないぜ。
ホワイトに到着したのは開始の30分程前。ステージ上には機材と楽器だらけで オレンジのアンプ4段積みとか打楽器系がいろいろ並んでいたりと見るからに賑やかな様子。一体どんなライブになるのか… この間出たアルバム「FRANCES THE MUTE」を聴くと 確かに面白いし好きな部分もあるけど まとめきれず冗長な部分が結構あってなかなか一枚通しで聴く気にはなれなかった。雨は相変わらずかなり降っていて セッティングも何かトラブルのようで予定の時間をすでにオーバー。流石に雨にうたれながらじっとしているのは体に堪えて心配になってきた所 ようやくセッティングが完了してステージから人がいなくなった瞬間 雨がピタッと止まってしまったのです。これ 本当に文で書くとなんでもないですが 思わず周囲からも声が上がる程の不気味なタイミングの良さでした。今までの雨は全部演出の一部だったように思えるような。
そして登場の渋いBGMが鳴り(エンニオ・モリコーネの映画音楽だったようです) メンバー登場。「アフロー! アフロー!」という客からのかけ声が 笑 やっぱりオマー(ボーカルの人)のアフロは実際見るとすごい。BGMの音楽が止まらないうちにおもむろに各パートがバラバラと鳴り始め いきなり先の見えないインプロからスタート 笑 すこしづつドラムとギターを中心にビートの輪郭がはっきりしはじめ オマーが歌い始めるとここでようやく客も「あ、ああーはじまったー? 長い前奏だったな」という感じのまとまった歓声 笑 ここにいる客の中では、マーズボルタがどういうライブをするのかあまりわかってなかった人の方が多かったんじゃないかと思う(自分もだけど) 普通は前奏が少しあって、普通にどんどん盛り上がって、サビが来て、4分以内に終了、わーわー拍手、みたいな典型的ロックの進行を想像したんだろうけど、 オマーは歌うというより甲高い叫びをギターのいななきのように上げ続け、楽器隊はどんどん熱のこもった混沌としたインプロ合戦を繰り広げる 笑 全然終わらないし!(最高だ)観客の少なくとも3分の2くらいはこの構成の予想出来ない音楽に戸惑ってちょっとひいてたと思う。 フジの3日目ラストに これで楽しく締めるかと思いきや このモッシュをやりたい俺の衝動はどこにいけばいいの? みたいな 笑 そういう人は御愁傷様だったな… でも変態インプロ大好きな私にはむしろ待ってましたという感じで 人数が多すぎて しかもめいめい勝手にやって今にも崩壊しそうな混沌を 力強いキッパリしたドラムがガシガシと容赦なく前へ駆り立てていく様にウットリとしておりました。突如キャッチーなサビに入ったりもするのでそういう時の客の「ここはわかるぜー!」的盛り上がり方もちょっと面白い。長い長いストーリーの果てに来るサビだから殺人的な格好よさですし。(誰だプログレを忍耐の音楽とか言う人は…)音に乗るというより ごーっと波に呑み込まれてどっかに連れ去られそうなライブだった。アルバムはメタルやミクスチャーっぽい雰囲気が強かったけどライブではよりサイケデリックプログレという印象。オーソドックスなんだけどどこか今っぽい。
さて次はシガーロス。なんか空を見れば満天の星空! まだ服はそんなに乾いてない上に 晴れて来た事で急速に気温が低下し 自分の周りはみな凍えそうな感じ。ある意味非常に最高のシチュエーションでしょう 笑 「ああ…このまま1時間以上微動だにもせずライブを観るのか…内蔵まで冷えて来たな…」とややあっちの世界に足をつっこみながら観たシガーロスはこれも非常に良いものでした。こんなに繊細な音を出すとは… ちょっと似ているバンドといえば近年のモグワイがありますが それと同じく あまりにもフルボリュームとミニマムなボリュームの時の音量差が激しく 小さい音の時も音の精巧さは変わらない(というかシガーロスは轟音よりこっちの方が重要ですね)ので CDでこの凄さは再現できないと思う。まったく繊細な音…時にあまりにも小さいその音に 1万位は集まっていそうな大観衆が少しの情報も聞き漏らすまいと微動だにせず 黙りこくって耳をすませているその状況自体が感動的でもありました。徹底的に美しい音を出すので癖が無くて物足りない向きもあるだろうけど ひたすらに怜悧で天上的な世界を構築していく強い意志のようなものに感銘を受けました。

さて ここまでで自分のフジはほぼ完了したのですが 最後にもう一つ。シガーロスが終わってはあー良かったなあーとオアシスに戻ってカレーを食っていると いい案配に苗場食堂で赤犬のライブが…前にNHKライブビートでどういう音楽をやっていらっしゃるのかは十分わかっていたつもりだが やっぱ実物はすげえや 笑 壮大な宴会芸とNHKでは紹介されていましたが まさにこのような場の為にあるバンド。もう下品! 「自家製」自称赤犬ビールを飲んでしまう狼藉なんて本当色々一杯一杯なんじゃないですか…?だって飲食エリアなのに一応…笑 この間下半身を露出して逮捕された某バンドの人が浮かばれないっていうか でも容赦なく踊らせるグルーヴ感も客を煽る巧さも一級品。通りすがりの人もどんどん足を止めていって みんな嬉しそうに「U・N・C・O UNCOが好きですー♪」と自発的に歌っております。 小生も片手にカレーを 足下は粘土質のぬかるみにはまりながら 笑 全く最低です。つい先程シガーロスで心が洗われたのが台無しです。多分同じ境遇の(脳が)可哀相な人は沢山いたでしょう。でもそれで4日間を締めて満足してしまえるのもまた フジの素晴らしさ…(信者)

例年以上に天候がはげしく変化し 目当てのアーチストも3分の2ほどしか観れず 人も多くて全く疲れ果てましたが 最後の仮眠を取って 早朝テントを片付けにかかるとなんとも名残惜しい気持ちで一杯になり これから仕事の納期もぶっとばして会社をトンズラこきたい気持ちで更に一杯一杯になりましたが 6時過ぎには苗場を離れ 12時には新宿に着いていました。ああさようなら俺の苗場。別れってあっけないね。

というわけで トータル的には去年のフジを上回るものではありませんでしたがやっぱり楽しかった… ただ 半端に知っているアーチストの割合が例年より多くなって来て 自然にそっちの方に足が向いてしまうので なんだこいつらは!?って衝撃はやや少なめでした。もっと積極的に名前も知らないアーチストを観に行くべきだった。あと2日目はいくらなんでも人多すぎです。あと来年こそぬかるみ禁止。超禁止

【ベストアクト(インパクト順)】 気がつけばプログレ色が…
エイドリアン・ブリュー
ROVO
・マーズボルタ
シガーロス
・PRAXIS
次点:あふりらんぽ、バンダバゾッティ

【ベスト飯(満足度順)】 体調不良気味で後半は肉を焼く臭いに気分悪くなったり
・ヘブンの石釜ピザ屋のマルゲリータ
・アヴァロンのトムヤムラーメン
・ココナツカレーオムレツ
・会場外物販エリアのモチ豚丼(塩味)

【その他ベストアクト】
・ワッショイさん
初日からワッショイワッショイいろんな人に叫びかけていたナイスな白人…いろんな所でみかけた

そんな訳でおしまいにいくつか貼り忘れた写真もはっておきます。どれが何なのかご自由に想像を。