「天使の恍惚」監督:若松孝二 1972年

CSでやってた山下洋輔特集でちらっと流れて興味が出たので観る。一応ピンク映画のジャンルなのだが 実際はとある極左の過激派組織が米軍キャンプから爆弾盗んだり内ゲバやってみたり闘争について議論したり衝動のままに爆弾テロしまくったりと傍迷惑な若さの大爆発をアバンギャルドな手法で描いた映画。暑苦しくも美しい作品なのだが一歩ズレた視点でみると大爆笑しかねない。登場人物ほぼ全員毒々しく悲壮なヒロイズムに酔って常にトランス気味。肝心の革命についての社会論みたいな事は一切語られず ただ破壊衝動のままに興奮状態でテロをしているだけに見える。天使の恍惚とはよく言ったタイトルである。しかし全く傑作だ。内ゲバで隠した爆弾の在処を吐かせるため女の太股に刺されたナイフのなんとエロいこと。血を吐きながらも闘争について語る痩せこけた男の顔の美しいこと。BGMが後半いくらか山下洋輔トリオの演奏が使われる部分と(演奏自体が映像で使われている)歌手で生計を立てている女の歌以外全く無いが それだけに非常に際だった存在感がある。強烈な熱に当てられて見終わった後クラクラする。しかしまたそれを味わいたくて頭から即見返してしまった。でも途中女子高生の売春婦がでてきたりとにかくフリーセックスな内容で あの当時の左翼的な思想が後に現在の乱れた風俗を生んだのかしらんとかちょっと思ったのは内緒だ