映画「ソイレント・グリーン」

1973年のSF映画、「ソイレント・グリーン」を観る。


あらすじ:時は近未来、すさまじい人口増加と産業の発達による環境破壊で物資不足に喘ぐニューヨーク。
動植物はほとんど死に絶えており、人々はソイレント社の生産する味気ない人工食糧に頼りきっていた。
やり手の警官であるソーン(ヘストン)は、とある上流階級で起った殺人事件を捜査するうち、
ソイレント社、ひいてはこの世界の重大な秘密をさぐり当ててしまう。


主演は僕の大嫌いな(ベン・ハーを除いて)俳優、チャールトン・ヘストン
以前観た同時代の同系統の彼の作品、「オメガマン」がかなり駄目だったので、
全然期待しないで観たのだが、これが真っ当な傑作で驚いた。
同僚の何人かはあまり面白いと思えなかったようだが、
多分、昔の古くて暗いSF小説群に耐性があるかどうかがキーなのだろう。
生憎とショッキングな最後のオチについてはすでに知っていたのだが、
それでも構成の妙か、何度見返してもラスト辺りの展開には胸をえぐられるような気持になる。
また、主人公の相棒である老人を演じるエドワード・G・ロビンソン(これが遺作になった)の演技も素晴らしい。
映画中盤の彼等の無言の食事シーンは、息を止めて魅入ってしまう程の名シーンである。


もうすぐDVDが出るので、これから観る人は、
そっちの監督のコメンタリーなんかも見ると良いかもしれない。
撮影当時耳がすでに聴こえなくなっていたG・ロビンソンの撮影話等が色々入っているようだ。


しかしまあ、30年前にこんな社会的且つノーフューチャーなSF映画が作られている訳で、
他にも古い映画には暗黒な社会を題材にした作品が色々あったように思う。
それに比べると、現在のやれ隕石が落ちるだの、未来からロボットがやってくるだの、
同じカタストロフィーな映画でも、随分脳天気になってしまったものである。
バッドな現実が前提にあるマトリックスでも全然暗い感じはないし、13Fとかもあまり暗い感じはしない。
マイノリティー・リポートも単なるSF的トリックを使った個人の活躍譚だしね。
社会問題を考えるより、個人の問題を考える事が今の主流なのだろうか。
それとも僕の知らない所で色々作られているのかな。